諸星大二郎先生は好きな漫画家の一人です。
先生には不思議な世界の作品が多いのですが、中でも際立って不思議な世界を繰り広げるのが「カオカオ様が通る」ですね。
主人公は辺境の旅人で、色々な惑星、色々な国を旅しているようです。
宇宙旅行的な大仰な格好ではなく、ごく普通の風体で描かれているので、宇宙旅行が普通となった遠い未来の地球人か、もしくはパラレルな世界のお話なのかな。
タイトルにあるカオカオ様は大きな顔を前後に持ち、そこから脚が生えたような巨大で異形のものです。
でも別に何をするわけでもなく、ただただ歩き進むだけの存在です。
生物か機械か、化け物か神かも不明です。
そんなカオカオ様に対しては、その土地土地によって敬う民族もいれば、嫌悪する民族もいるし、逃げ惑う民族や、無視を決め込む民族もいると様々な対応です。
主人公がガイドとして雇ったタパリ人の少年(土地の人)、カオカオ様について問うと、「あれはああいうものです、それ以上でもない、それ以下でもない」みたいな曖昧な答えしか返って来ません。
実際にそうなのでしょう。
カオカオ様はそれぞれの国を通るだけで何もしません。
カオカオ様の周囲で人間が一喜一憂するだけです。
カオカオ様が通りすぎる様々な国の民は特徴的な民族が多いのですが、特に心惹かれるのが主人公がガイドに雇ったタパリ人です。
彼らは美しいものを見ると自殺してしまうという習性がある民族です。
何故なら、美しいものを見たとき(見て感動をした時)が一番幸せで、その時に死ねることが幸せだと思っているからです。
そのため、ガイドの少年をはじめ、若いタパリ人は顔の前に半透明なシェードのようなものを被り、世界がはっきりと見えない事で自殺を防ぐ仕様の服装を身につけています。
主人公と少年が出会った際にも、絶景の景色を前に崖から飛び降りるタパリ人がいました。
様々な国々を縦横無尽に横切り、カオカオ様は海へ進んでいきます。
カオカオ様を見て自殺をするタパリ人もいるという話で、主人公が恐る恐る少年に尋ねると、さほど美しいとも思わないという事で、顔のシェードを外して二人で海の中を歩いていくカオカオ様を見送るシーンで物語は終わります。
カオカオ様が何だったのかは未だに不明です。