昔、まだ趣味で写真撮影をしていた頃、仲間内では池袋や新宿の今はなきカメラのさくらやで屯するのが常だった。
いわゆるカメラ小僧と呼ばれる類なのだが、自分のように小僧というには年を食っている人間も多かった。
これは当時は今と違い、写真撮影という趣味が金がかかる趣味であった事も一因であると自分は考えている。
なにせ、一眼レフカメラに交換レンズを数本集めれば、それだけで数十万円はするし、当時デジタルなどはなかったので、フィルム代、さらに現像代、プリント代のランニングコストはいくら趣味の為と言っても働いてそれなりに稼いでいなくては賄えない額である。
自分たちは通常、フィルム現像だけを頼み、店のライトボックスでフィルムのチェックをして数枚のみプリントするという形で、少しでも費用を抑えようとしていた。
と、長い前フリになったが、そうしてカメラのさくらやの前などで現像のアガリを待っていたりすると、同じように写真撮影を趣味としていると思われる中肉やや小太り、銀縁メガネに細い目の自分たちと同世代の人間が、思い切り侮蔑の目をこちらに向けながら話しかけてきた。
オマエラ、マダコンナコトヤッテンノカ?
最初、何に言いがかりを付けられているのか分からなかった。
自分たちの仲間内ではカメラ小僧といっても、鉄、アイドル、ポトレ、ネイチャー、スナップ、スポーツと様々な仲間が出たり入ったりしていた。
どうも当該彼が言うには、そのような撮影をしていることを揶揄しているらしい。
それがもうネチネチネチネチ文句というか、言いがかりを付けてくる。
何が気に食わないのかは分からないが、文句をつけたいという事は分かった。
うざいので場所を少し移動しても、付いてきて文句を言ってくる。
ただ店でチラっと顔を見かけるだけの関係で、いきなりそんなに文句を言われてもねえ。
聞き流していても、しつこくしつこくぐちぐち言っている。
遡る事十数年前、アイドルの撮影現場に彼が来ていたという話を、後から知り合いに聞いた。
では、元々は同じ穴のなんとやらではないのか。
その彼との知己がある人間によると、当該文句魔王は今現在、ヒーローショーやきぐるみショーなどの撮影に嵌っているらしい。。。
幼稚園児や小学生低学年に混じって、それらのステージ目当てで全国を撮影で回っているそうで。
ということは彼の思考によると、鉄道、アイドル、スポーツなどを嬉々としていて撮影しているヤツラはダメダメで、子供のショーの撮影こそ王道、正義ということになる。
まあ、人の好みは十人十色なので多くはいわないが、アイドル、鉄道、スポーツ撮影の進化系がそれだとは、どうしても思えないのだが、さていかに。
当該彼であるが、一時期、いきなり頭を丸坊主にしてカメラのさくらやに現れたことがある。
噂によると、髪の毛に邪悪なものが憑いていると言っていたそうで。
これはマジで絡んではいけないタイプの輩なんだと、その当時思った次第で。
それはある意味正解で、自分の知人があまりのネチネチ口撃に耐えられずに思わず手を出してしまったら、怪我をしたとかで訴えられたとか。
まさに難儀な人だ。
今頃どうしているやら。